2011年4月8日金曜日

『くまとなかま』

「楽しい仲間がぽぽぽぽーん!」

 テレビから軽快な音楽が流れる。状況に味方され、加速的に認知を広め、消費されたCMだ。
 男は、Twitterのタイムラインを眺める。
 楽しい仲間をもじったネタ。楽しい仲間を基にした大喜利。楽しい仲間それ自体への批評/感想。「楽しい仲間」とは即ち、「ぽぽぽぽーん」の枕詞である。少なくとも今、この観測範囲ではそうなのだろうな、と男は思った。
 その現実を認識して、男は居ても立ってもいられなくなった。激情に任せて立ち上がる。そのまま小刻みに、何度も何度も練習した踊りをなぞった。
 
「愉快な仲間がッ、楽しい仲間がッ、イェーッ、みんな待ってるぜェーッ……」

 踊る熊に、しかし仲間はもういない。
 

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