「あなたも私も、ポッキーなのね」
絶望的な台詞にも、しかし涙声の混じる様子はない。僕らの体に、涙腺は無くなってしまったのだから。
「ああ。もうこの地球上には、人間はいない」
僅かに揺らぐ、彼女の真っ直ぐな―――一切の凹凸のない体躯。表情すらも失ってしまったこんな体でも、その身じろぎだけで彼女の悲しみが読み取れたことに、僅かな安堵を覚えた。僕はこんな姿になっても、ヒトであったことに縋り付こうとしている。
だが、抱きしめて安心させてあげることは出来ないのだ。物理的に、もう二度と。肉体を介した交感がここまで制限されていて、果たしてヒトと呼べるのか。
自信はなかった。
「行こう。ここにもじきに、トッポが来る」
彼らと遭遇してしまえば、戦闘は避けられない。
「……なぜ、争わないといけないのかしら。私たち、同じプレッツェルなのに」
「人間だった頃にだって諍いはあったさ。プレッツェルになったから無くなるはずだなんてことは、言えない」
チョコが内側か外側か。奇しくも人種の肌の違いのようではないか―――と、笑えないジョークを口に出そうとして、やめた。
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